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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
 これ一つ売り飛ばしても、長屋に暮らすその日暮らしの一家が一年どころか十年は遊んで暮らせるだけの値がつくはずだ。
―でも、これだけの財宝を一体、どこから運んできたのかしら?
 小紅の疑問は当然といえた。江戸の町外れの荒れ寺には不似合いすぎる光り輝く財宝の数々とくれば、これらが真っ当な手段でここにあるとは到底、想像しがたいからだ。
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