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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
 栄佐は小さく首を振り、男に頭を下げた。
「いや、猫が一匹、あの茂みの方に逃げていったようだ。申し訳ない、俺の勘違いだったらしい」
 栄佐が小紅の隠れている茂みを指したときには一瞬、身が竦む想いがしたが、二人はほどなく肩を並べて御堂へと戻っていった。
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