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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第14章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 熾火(おきび)
 燠火

 翌朝になった。朝四ツ(午前十時)、龍馬は約束どおり、長屋に現れた。場所は予め伝えてあるので、すぐに判ったようである。
 問題はそのときに栄佐がいるかどうかであったけれど、それは時の運に任せるということにしてあった。
 幸いにも外から様子を窺うと、人の気配があった。
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