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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第14章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 熾火(おきび)
 最初、栄佐は無反応だった。宗徳寺というのは、あの廃寺の名前だ。無反応に見えたけれど、よくよく見ていると、かすかに表情が動いたのが判る。
「栄佐さんは私が何も知らないと思ってるのよね。でも、全部知ってるわ。あなたが五のつく日の夜、夜更けてから出かけていって、朝まで帰らないのも」
 栄佐が依然として顔を背けたまま言う。
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