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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第14章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 熾火(おきび)
 龍馬は眼を瞑った。しばらく懐手をして思案に耽っている風である。どうも考え事をするときの彼の癖らしかった。
 小紅はすっかり泣き止んで、龍馬の意外に整った面を見つめていた。栄佐とは異なり、骨太の男らしい端正な風貌である。すっきりと通った鼻梁を何とはなしに眺めていると、突如として龍馬が眼を開けた。
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