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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆
 不満顔の栄佐だ。
「ほら、私がここに引っ越してきた時、挨拶代わりにって手ぬぐいを配ったでしょ。あの時、栄佐さんがお返しにって、夜に焼き芋を持ってきてくれたの。憶えてないの? あのときも助蔵さんの焼き芋を二人並んで食べたじゃない」
 栄佐が納得したように頷いた。
「あのことか。そりゃ、憶えてるぜ。お前が俺の男ぶりに負けて惚れた記念すべき夜だもんな」
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