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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆
「懐かしいわ、この味」
 ん? というように栄佐が首をひねった。
「何だ? 助蔵爺さんの焼き芋なら、去年もその前の年も食べただろ」
 小紅は微笑んだ。
「最初の年よ。この焼き芋を食べた最初を思い出していたのよ」
「最初?」
 訳が判らないといった表情の栄佐に、小紅はクスリと笑った。
「嫌な奴だねぇ。自分だけが判ったような顔で思い出し笑いなんかしやがる」
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