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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆
「実は今朝、胡散臭い野郎をお前の家の前で見つけたんだ」
 栄佐は今朝の不審な小男について手短かに説明してやった。小紅は真剣な面持ちでいちいち頷いていたが、やがて、ポツリと呟いた。
「それで、栄佐さんがおとっつぁんのことを突然、訊いたりしたのね」
 ここまで話して小紅が何も気づかないはずはない。小紅に結局、すべてを話してしまった己れの浅はかさを栄佐は自分で呪った。
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