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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
「準平さんは?」
「は?」
 口には出さずとも、小紅が準平を嫌っていることをお琴は承知している。その小紅の口から準平の名が出たものだから、少々面食らっているようだ。
「若旦那さまでしたら、お出かけになっておりますが―、っていうより、こんなことをお嬢さまのお耳に入れて良いものかどうか判りませんけれど、昨日もその前もこちらにはお戻りなっていません」
「―そう」
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