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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
 こんなことなら、あの夜に抱いて貰えば良かった。たとえ叔父さまに身勝手な娘だと嫌われたしても、その夜を一生涯の想い出に生きてゆけるもの。
 そこで小紅は首を振る。
 何を愚かなことを考えているのだ、自分は。大馬鹿なのはこの自分ではないか。武平が死ぬはずはない。そんなことがあって良いはずがない。この誰よりも優しい人がこれで終わりだなんて、良いはずがない。 
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