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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
―日頃から無理を重ねておられたようですな。身体そのものも弱っておられるようですから、かなり厳しい状況だと申し上げざるを得ません。
 先刻の医師の言葉が耳奥でこだまする。
 馬鹿よ、叔父さまは。自分のことなんてこれっぽっちも考えずに他人のことばかり考えて。その挙げ句、こんなになっちまうだなんて、大馬鹿じゃないの。
 小紅はその場に打ち伏して、すすり泣いた。
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