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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
 小紅は小さな溜息をついた。
 今し方、一番番頭が居室を辞していったばかりだった。話の内容は、準平との仮祝言を年明け早々に行ってはどうか、というものだった。
 もちろん、まだ武平の四十九日も明けてはいないのだからとその無謀さを説いたけれども、番頭は、それならせめて四十九日の法要を終えたらすぐに仮祝言をと譲らない。
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