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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
 準平は上から小紅を押さえつけると、顔を近づけた。口づけされるのかと警戒したのに、準平はいきなり首筋に唇を押し当ててきた。―かと思ったら、ねっとりとした舌で首筋を舐められ、小紅はあまりの気持ち悪さに悲鳴を上げた。
「いやっ」
「お前の声にはそそられるんだよな。〝いや〟が〝良いわ〟とか〝来て〟にしか聞こえないんだ」
 何を馬鹿げたことを言っているのだ、この男は。
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