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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
「お前の肌って、何か良い匂いがする。香水でも付けてるのか?」
そんなものは付けたこともない。だが、応えてやるつもりはなかった。
「ふうん、黙(だんま)りを決め込むつもりか。それなら、それで良い。その中、嫌でも声を上げるようにしてやるから」
準平はまるで犬がするようにペロペロと舌でうなじを舐め上げてゆく。その度にゾクゾクとした痺れのようなものが背骨を駆け抜けてゆく気がして、小紅は身を竦ませた。