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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
小紅は駆け出そうとして、ふと振り向いた。自分の部屋から見渡せるあの場所に、純白の可憐な花が一輪、花ひらいているように見えたのだ。だが、眼をこらしても、見えるのは早くも薄く積もった雪ばかりで、初冬に咲いていた菊はどこにも見当たらない。
恐らくは眼の錯覚なのだろうと小紅は想いを振り切るように駆け出す。裸足で踏みしめる雪は冷たく、かじかんでしまいそうだ。少し走ると、寒椿の茂みが見えてきた。ここがお琴の話していた場所に違いない。
恐らくは眼の錯覚なのだろうと小紅は想いを振り切るように駆け出す。裸足で踏みしめる雪は冷たく、かじかんでしまいそうだ。少し走ると、寒椿の茂みが見えてきた。ここがお琴の話していた場所に違いない。