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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
 わめき散らす準平の声に混じって、番頭や手代の声も聞こえた。いけない、このままでは捕まってしまう。
 小紅は小さく息を吸い込むと、自らを叱咤して寒椿の茂みと茂みの間を通り抜けた。多少緑の葉が顔や手足に擦り傷を作ったが、準平から与えられた数々の陵辱を思えば、こんなのはたいしたことはない。
 何とか茂みを抜けると、お琴の言っていたように眼前に築地塀があり、そこだけぽっかりと穴が空いていた。
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