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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち
 母のように優しくしてくれた女だった。短い間だったけれど、お琴がいてくれたから、ここでの日々も何とか堪えられたのだ。
 自分を逃すのに手を貸したことを準平に知られていなければ良いが。自分のせいで優しいお琴が酷い目に遭うのは辛かった。
―ありがとう、お琴さん。
 小紅は心で礼を言い、思い切ってその穴に身を滑らせた。
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