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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第1章 【残り菊~小紅と碧天】 始まりは雨
幼かった小紅は両膝を抱えて壁際に座り込むと恐る恐る周囲を見回した。薄暗い物置の中は雑然として、使われなくなった古い机や行灯などが山積みされている。大方は埃を被り汚れていた。
急に心細くなってきて、小紅は立ち上がった。
―準平ちゃん、私、やっぱり、ここはいや。
鍵を開けようと手を伸ばしたその時、小紅の小さな身体を準平が後ろから抱きしめてきた。
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