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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第1章 【残り菊~小紅と碧天】 始まりは雨
その準平との結婚。それは歓びをもたらすはずもなく、むしろ嫌悪感を呼び起こすものでしかない。しかし、大きな恩義のある叔父の申し出を断ることは考えられない。
たった一人で生きていくことは難しいかもしれないけれど、不可能ではないはずだ。小紅はずっと裁縫の稽古にお師匠さんのところに通っていて、お針子として通用するほどの技術を持っている。その腕を活かせば、自分一人くらい生きていく稼ぎは得られるはずだ。