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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
ぐすっと洟を啜り、ふた口めを囓った時、突然、腰高障子が開いた。小紅は愕いて握り飯を取り落としてしまった。
「あ―」
小紅は悲鳴のような声を上げた。準平ではないが、明らかに目つきの悪いならず者風の男が三和土に立っている。
「お嬢ちゃん、ちょいとおじさんに付き合ってくれるかな? さるお人からお前さんを連れてくれば、大枚を貰えると約束してるんでね」
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