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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
 やはり、準平の手の者だった。小紅は絶望感に眼の前が白く染まるのを感じた。それにしても、何て執念深くて、しつこい男なのだろう。
「来ないで!」
 そう言って堪えてくれるような相手ではないことは百も承知だ。
 小紅は注意深く周囲を窺った。枕許には盥が置いてある。熱が出た小紅の額に栄佐が手ぬぐいで冷やしてくれるために持ってきたのだ。
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