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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
駆けに駆けてやっと両国橋が見えてきたときは安堵感のあまり、その場に座り込みそうになってしまった。だが、ここまで逃げてきて、捕まるわけにはゆかない。
そもそも両国橋の名の由来は武蔵(江戸)の国と下総(千葉)の国を渡すということで名付けられた。〝江戸名所図絵〟には
―浅草川の末、吉川町と本所本町の間に架す。長さ九十六間、橋の前後ならびに橋上に番屋を据えて、これを守らしむ。
とある。