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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
 小紅は〝ううん〟と首を振った。
 栄佐は小さく息を吐いて続けた。
「難波屋はここらで真実を知った方が良いと思ったんだ。真の阿呆でもない限り、真実を知れば、今まで自分がどれだけ愚かなことを積み重ねてきたか自ずから悟る。先代がどんな想いで自分の子でもないガキを引き取り、惜しみない愛を注いで大切に育てたか。あいつももう子どもじゃねえんだ、それを知るべきだし、知らなければ、一生ずるずると堕ちるだけ堕ちていくだろうからな。それはまた亡くなった先代の望むところじゃねえはずだ」
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