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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】
澄んだ陽差しが地面に降り注ぎ、陽溜まりを作っている。更に四半刻ほどが過ぎた頃、小紅はやおら立ち上がった。幾ら何でも、これでは待たされ過ぎだ。自分が特に堪え性がないと思ったことはないけれど、やはり客間に通されて半刻余りも待ちぼうけを喰らわされて良い気がするはずもない。
小紅の前には茶托に載った湯飲みが一つ無造作に置かれているが、茶はひと口も呑まないままに、とうに冷めていた。