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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】
二日後の朝、小紅は随明寺に出かけようと長屋を後にした。腰高障子を閉めて隣にちらと視線を投げ、しばらく躊躇って首を振り、諦めたような面持ちで歩き出す。
隣はもちろん栄佐の住まいだ。表に〝腰痛、肩凝りに効き目あります〟と看板がぶら下がっているところを見れば、留守ではないようである。大体、栄佐は芝居小屋の仕事があるとき以外はいつも長屋にいる。栄佐に言わせれば、〝鍼医は副業で役者が本職〟なのだそうだ。
隣はもちろん栄佐の住まいだ。表に〝腰痛、肩凝りに効き目あります〟と看板がぶら下がっているところを見れば、留守ではないようである。大体、栄佐は芝居小屋の仕事があるとき以外はいつも長屋にいる。栄佐に言わせれば、〝鍼医は副業で役者が本職〟なのだそうだ。