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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】
 丁寧に辞退した。また二人並んでゆっくりと歩き出す。実はこの界隈には門前町に似合わず、茶店の少し先には出合茶屋が数件軒を連ねている。昼間とて人通りがないのを見越してであろうし、確かに道ならぬ恋や人目を忍ぶ恋路にはもってこいの場所ではあった。
 市兵衛と小紅はそちらとは反対の方角に向けて、どちらからともなく歩き出した。人気のない小道をゆけば、直に賑やかな大通りに出る。大通りには忙しなげに人々が行き交い、その中には物売りの姿もあった。
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