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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い
小紅が出ていった後、栄佐は深い息を吐いた。相変わらず壁に凭れたまま、虚ろなまなざしでちゃぶ台をぼんやりと眺める。小紅が持ってきたときはまだ湯気の上がっていた大根の煮物もとうに冷めていた。
―俺は最低の男だな。
栄佐はゆっくりと首を振り、緩慢な動作でちゃぶ台に近づいた。
きちんと揃えて置いてある箸を取り、大根をひと箸口に放り込む。たっぷりとした汁でじっくりと煮込んだ大根は口当たりもとろけるようでこの上なく美味だった。
―俺は最低の男だな。
栄佐はゆっくりと首を振り、緩慢な動作でちゃぶ台に近づいた。
きちんと揃えて置いてある箸を取り、大根をひと箸口に放り込む。たっぷりとした汁でじっくりと煮込んだ大根は口当たりもとろけるようでこの上なく美味だった。