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第8章 第一部・第二話【赤とんぼ～小紅と碧天～】　すれ違い

「当然だ、いきなり求婚されて、はいと言えるはずがないのは私もよく判ります。ですが、少し考えてみてくれませんか？」
「それは」
　無理ですと言おうとした彼女に皆まで言わせず、市兵衛は懐紙に包んだ小さな包みを彼女に押しつけた。
「桜団子を包んで貰いました。持って帰って、お腹が空いたときにでも食べて」
　市兵衛は言うだけ言うと、頭を下げた。
「お婆さん、お勘定はここに置いておくよ」