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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い
―殿ォ、何とぞおとどまり下され。殿のお苦しい胸の内はこの爺はお察ししておりますれど、今、殿がおられなくなりましたら、お家はどうなりましょう。東照公以来、連綿と続いてきた由緒ある譜代旗本のこのお家はお取りつぶしの憂き目にあいますぞ。
乳母の他に唯一、栄佐の孤独を理解し得たこの忠実な用人は彼の幼い頃からの守り役でもあった。
―殿、お願いでござる。角倉(かどくら)のお家を殿の代で絶えさせてはなりません。どうか、どうかおとどまりを。
乳母の他に唯一、栄佐の孤独を理解し得たこの忠実な用人は彼の幼い頃からの守り役でもあった。
―殿、お願いでござる。角倉(かどくら)のお家を殿の代で絶えさせてはなりません。どうか、どうかおとどまりを。