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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い
小紅と寄り添うように馴れ馴れしく座り込んで親しげに話している男、その男を栄佐は知らない。見たところ、着ているものは縞柄の大島紬で上物だ。ゆったりとしたその物腰は落ち着いて洗練されている。
町人であることは確かだが、どう見ても、大店の主人か若旦那といった風格を漂わせていた。年の頃はまだ二十歳過ぎほどにもならないだろう。栄佐よりは若いが、その存在感は若さに似合わないものだ。