パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第8章 第一部・第二話【赤とんぼ～小紅と碧天～】　すれ違い

　もちろん、少し離れた場所に佇む彼には、二人のやりとりまでは聞こえない。栄佐は固唾を呑み、二人を食い入るように見つめた。気づかれないようにそろりと移動する。
　幸か不幸か小紅と見知らぬ若い男が並んで座る椅子からは斜め前方にいる栄佐は死角になって見えにくいはずだ。茶店の周囲に日除けの葦簀(よしず)が立てかけてあるのもこの場合、栄佐に味方してくれていた。
―それにしても、あいつは誰なんだ？
　栄佐は知らず拳を握りしめていた。