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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬

途端にお彩の顔がパッと光が差したように輝いた。
「もちろんよ、あなたを京屋の嫁にと望んでいるのは先代―大旦那さまでもあるのだから」
「大旦那さまが?」
これには愕かざるを得なかった。先代の京屋市兵衛といえば、同業者が集まる寄り合いの長を長年勤め、身代を倅に譲った今もなお、江戸の呉服商たちの間に睨みを利かせている。そんなやり手の商人である先代までもが小紅を徳太郎の嫁に望んでいるという。
「もちろんよ、あなたを京屋の嫁にと望んでいるのは先代―大旦那さまでもあるのだから」
「大旦那さまが?」
これには愕かざるを得なかった。先代の京屋市兵衛といえば、同業者が集まる寄り合いの長を長年勤め、身代を倅に譲った今もなお、江戸の呉服商たちの間に睨みを利かせている。そんなやり手の商人である先代までもが小紅を徳太郎の嫁に望んでいるという。

