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第9章 第一部・第二話【赤とんぼ～小紅と碧天～】　嫉妬

　やはり、似ている。つい今し方、見たばかりの内儀の優しい面立ちと市兵衛の端正な風貌はよく似ている。こんな優しい人たちを自分は卑怯にも騙そうとしていた。そう思うと、自分があまりにも情けなくて、また余計に泣けてきた。
「そういえば、先刻、うちに来ていたんだって？」
　嘘も言えず、小紅は頷いた。市兵衛は少し笑った。
「今日はお前さんの後をつけてきたよ」