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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
「叔父さま、今日は叔父さまの好物だったみたらしを持ってきたわ」
 息継坂のたもとの茶店で買い求めてきたみたらし団子を取り出し、竹の皮の包みを開く。
「熱いお茶がなくて、ごめんなさいね」
 まだ真新しい墓石にそっと手を伸ばして触れる。〝真行院紫山武徳居士 行年三十二歳〟と墓石には刻まれている。
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