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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
みたらし団子には熱いお茶が欠かせないというのは叔父の持論であった。白と黄色の小菊の花束を墓前に供え、線香に火を付ける。白い煙がひとすじ天に向かってたなびいてゆくのを、小紅ははるかなまなざしで見送った。
あの煙を辿ってゆけば、天の国へと還っていった叔父に逢えるのだろうか。
「叔父さま、―武平さん」
呼びかけて、その場にくずおれた。最初の呼びかけは優しかった叔父に、名で呼んだのは血の繋がった叔父ではなく初恋の男として。
あの煙を辿ってゆけば、天の国へと還っていった叔父に逢えるのだろうか。
「叔父さま、―武平さん」
呼びかけて、その場にくずおれた。最初の呼びかけは優しかった叔父に、名で呼んだのは血の繋がった叔父ではなく初恋の男として。