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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第1章 【残り菊~小紅と碧天】 始まりは雨
「それで、旦那さまはどこがお悪いのかしら」
お琴は肩を竦めた。
「申し訳ございません。どうもいつもの喋り癖がまた出たみたいですね。亭主にもよく言われるんですよ。お前のいちばんの難所はそのお喋りが過ぎることだってね。そうそう、旦那さまのお身体のことでしたね。旦那さまは心ノ臓を患っておいでなのですよ」
「心ノ臓? それは大変なことだわ。もちろん、お医者さまには掛かっているのでしょうね」