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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第1章 【残り菊~小紅と碧天】 始まりは雨
叔父はどこまでも度量の大きい、男気のある人だった。昨日、準平は〝親父に惚れているのか〟と言ったが、そういう男女の色恋とは別の意味で、小紅は武平を尊敬していた。武平に惚れているわけではないが、もし将来、誰かに添うのならば、叔父のように男らしい男が良いと漠然と夢見ていた。
小紅がとりとめもない想いに耽っていると、お琴が素っ頓狂な声を上げた。
「あらまあ、私としたことが、とんだ油を売っちまいました」
小紅がとりとめもない想いに耽っていると、お琴が素っ頓狂な声を上げた。
「あらまあ、私としたことが、とんだ油を売っちまいました」