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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第11章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 疑惑
「ええ、そうですけど」
 小紅は男の眼を見た途端、ゾワリと膚が粟立った。底なしの奈落を束の間、そこに見たような気がしたからだ。男の眼は無限の闇へと繋がっていた。纏う雰囲気よりも何よりも、その男が常人ではないことをその眼が示している。
「あっしは宇之助といいやす。ちょいと栄さんに用があって探し回ってたんですが、なかなか住まいが見つからなくて難儀していたところでさ。生憎だが、留守のようだ」
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