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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
「なあ、小紅よ。男がそういつまでも待たされて、平気でいられるとでもお前は思ってるのか?」
「それ、どういうこと?」
 栄佐はしばらく小紅の瞳の奥を見極めるように見つめていたかと思うと、やがて、その手を放し腹を抱えて笑い出した。
「ハッ、十七になって嫁入り話も出ようって歳になって、こんな科白の意味も判らねえとは、とんだ箱入りお嬢さまだ」
 どこか馬鹿にされたような言い方が癪に障る。小紅はキッと栄佐を見据えた。
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