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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
「あんたの気持ちはともかく、栄さんの気持ちなら、丸判り。あんたが好きで好きで、欲しくて堪らない。小紅ちゃんがうちの見世の妓なら、もうこれは有無を言わせず栄さんと一つ寝間に閉じ込めちまうけど、そういうわけにもゆかないしさ」
 美桜はここで断ってから、煙管(きせる)に火を付けた。しばらく上手そうに煙管をふかした後、訳知り顔でこんなことを言う。
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