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サイドストーリー
第1章 ハートのエース
「ヒロ君ごめんね」
「なにが?」
あまり顔に酔いが出ないヒロ君はお兄ちゃんがつぶれてもビールを飲み続けている。

「いつもお兄ちゃんがさ。失礼なこと言って」
「ん?気にしてないよ。それにマサはナオの兄貴の前に俺の親友だからね」

ヒロ君はいつも優しい。

「ナオ。就職おめでとう。これでナオも立派な大人だな」
「ありがとう。就職決まってホッとしたよぉ~」
「まぁ決まらなかったら、俺と結婚しちゃえば良いけどね」
「え・・・・」

「さて。そろそろ帰ろうか。マサもつぶれちゃったしね」
「あ~あ。あたし、今日はヒロ君とお泊りしようと思ったのに」

「俺とは結婚したらいつでも一緒にいられるだろ。
『お兄ちゃん』と残り少ない時間を過ごせ。な?『おにいちゃん』?」

「ヒロく・・・ん」

ヒロ君の口から初めて結婚って言葉が出て緊張した。

「うるせー。嫁になんかやるか」
「お兄ちゃん!!起きてたの?」
「今起きたんだ。嫁入り前の娘が男と泊まっちゃだめだ。帰るぞ」
「なによ!自分は彼女と泊るくせに」
「大人は良いんだ!」

あたしだって22なんだけど・・・・

「ヒロ、こんなプロポーズ認めないからな!
ナオが欲しかったらもっときちんとプロポーズしてやれよ!」
「分かってるよ」

ヒロ君はそんなお兄ちゃんの態度に苦笑いしていた。

「帰るぞ!」

いきなり手をひかれてヒロ君とさよならする。
ヒロ君の言うとおり、お兄ちゃんとこうするのもあと少しかも。

「お兄ちゃん大好き」

「当たり前だ!」


秋の夜、お兄ちゃんの耳は真っ赤に染まっていた。


END*****




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