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サイドストーリー
第12章 好きと言って②
「梨乃ちゃんは別れるって言いだすまでは春人を好きだったと思うよ」

嘘か、本当か。
麻子は俺を慰めるようにそう言った。

「俺、シュウカツで映画の約束のドタキャンの埋め合わせを
レンにお願いした事がある。今思い出した」
「そう仕向けたのは私だしね・・・・」

二人はしばらく何も言えなかった。

たとえ、心の奥底に麻子がいたとしても。
俺はいつの間にか梨乃を。梨乃だけを好きになった。

そんな自分の変化に気づかずに梨乃を傷つけて
ふたりの邪魔をしていたのは俺なんだろうか?


全てを知って黙っていた麻子と
何も気がつかなかった俺と
どちらの罪が重いのだろう・・・・

ごめん。
梨乃。ごめん。

いろいろ全て。ごめんな。

それでもやっぱり―――
梨乃。好きだったよ。



五月待つ花橘の香をかげば 昔の人の袖の香ぞする

――5月の花の香がすると 昔好きだった君を想いだす――
(古今和歌集)



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