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サイドストーリー
第14章 キスマーク
「いつもお世話になっています。横浜ホールディングの森川です。
今年のワインの売れ筋をお伺いに来ました」

企業向けのイメージセミナーとやらを上司に無理やり受けさせられ
どうせつまらないセミナーだとタカをくくっていたら
案外面白い内容だった。

商品別に戦略方法をクソ生意気に講義している女の話に
ふ~んと思いつつ、ちょうど南米から帰ってきた同期の森川を誘って
ウチが輸入元になっているワインの売れ筋をバーにリサーチしに来た。

この店はワインのほとんどをうちから仕入れてくれる上得意だ。

「こちらこそお世話になっております。今年のワイン、良いですよ」
気さくなマスターとテイスティングをしながら談笑していたら

ふと目をやった先に、昨日受けたセミナーの
クソ生意気な女講師がカウンターに一人でいた。

「上野さん~もうやめた方がいいですよ」
カウンターの中にいる男にやんわり止められているにもかかわらず
「お願い。もう1杯だけ。ここのワイン、美味しいんだもん」
なんて、小首をかしげてお願いしてる。

あぁ?俺たちに講義していた生意気な態度とは大違いだな?

「もう1杯でやめるから」

自分の人差し指を唇に引き寄せてカウンターの中の男にウインクした。

なぜか・・・・
イライラした。

あの女、何やってんだ?

「ゲン。何見てんの?」
マスターが新しいテイスティング用のワインを取りに行っている時に
森川が俺の視線の先を見つけた。

「女?ゲンが興味持つなんて珍しいね」

ニヤニヤ笑ってる、森川はムシだ。

「森川、ここに今飲んだワインは仕入れ値の何掛けで入れてる?」
「は?なんで?」
「後いくら安くできる?」
「はぁぁ?」
「早く答えろ」
「ダース3500円までなら俺の範囲内」

そんなやり取りをしているとマスターが新しいワインを持って来た。

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