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サイドストーリー
第17章 10年目の恋
お姉さんの記憶はだんだん胸の奥底にしまい込んだ。
忘れることはないけれど。
それでも、今目の前にいる彼女の方を好きになって行った。

キスも。
キスも。
初めてだったあの時のように、ぎこちないものじゃなくて
優しく彼女をついばむようにキスをする。

「今日は月が青いね」
「ブルームーンだ」

レイトショーの帰り道、二人で手をつないで俺のアパートまで歩く。
月の光を身体に浴びて。
ゆっくりと二人で歩く。

お姉さんのアパートがあったはずの更地に何か建築されるようだ。

「あ。アパートが建つんだ。徹のアパートの近くだから
私、ここに引っ越してこようかな」

そう言った彼女の顔は月の光でキラキラ輝いていた。
月の光に包まれて、消えてしまいそうだった。
どうしてそんな事を思ったのか、分からない―――

「志保。行くぞ」

俺は彼女の指に指をからませた。
「こんどこそ」消えてしまわないように――――


END****


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