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狂人、淫獣を作る
第2章 捕獲
 仲居が出て行くと、後藤は話の続きを始めた。
 「さっき幸運だと言ったのはまさにここからなんだが……不思議なこともあるもんでね、リナが、偶然にも……偶然にもだよ? 俺が経営する塾に来た。入塾希望者としてね」
 「後藤氏は塾も経営してたんですか?」
 「都内とはいえ、一つ二つは浮いて遊んでしまう物件が出てしまうものだ。塾はその利用方法の一つだ……それはともかく、さすがの俺も驚いた。一旦は忘れていた話の中心人物がいきなり目の前に現れたんだ。しかもだ……」
 「しかも?」
 「リナは十八になっていた。友人と再開したのは二月、確か塾に来たのは六月か七月の話だったんだが……彼女はちょうど六月生まれだった」
 「いよいよ、後藤氏に風が吹いてきたということですね」
 「だが事は簡単じゃあない」後藤はいつしかニヤニヤとした表情になっている。「塾に関しては俺は経営をやってるだけであって、講師として教室に立つことはない――つまりリナとの接点がないんだ。当然リナも俺という人間を知らない。いきなり声を掛けると大きな魚を逃がすことになりかねん。かといって友人が送りつけてきた写真をネタに小娘を脅すなんてのは下の下だ。そこで一芝居打つことにした。ある日、授業が終わった後リナを経営者という立場で別室に呼んだ。『今日たまたま教室を視察していたが、身が入っていないように見えた、何か大きな心配事を抱えていないか?』とね。教師と不適切な関係を持っていた上に、その教師は警察に追われ未だ捕まっていない……精神的に未熟な高校生にとって不安でないはずがないからな。案の定、不安があるということは打ち明けてくれた」
 源は時おり白湯をすすりつつ、将棋盤の上に駒を並べて、並び替えて、また並べてを繰り返しながら後藤の話を聞いている。
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