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狂人、淫獣を作る
第2章 捕獲
 「ここが勝負どころだな、と思った俺は……『友人』というカードを切った。警察に追われているというリナの高校の教師――実は俺とは高校の同級生で親友だったことを教えてやった。追われている理由は知らないが、俺も彼を心配している、とね――これが効いたようで、リナはとうとう泣きながら彼との関係を告白した。心底後悔してると言いながら……。ここで大事なのはリナを何より安心させて信頼を得ることだった。俺は、一切口外するつもりはないことと、何より塾としては一人でも多く、一段階でも高い大学に入ってもらうことが大事なのだから、彼のことで相談できるのは俺しかいない、気持ちが不安定になった時は勉強に集中できるようにいつでも俺が話を聞くと言い聞かせてやった」
 「なるほど……見事ですね後藤氏。チャンスと見るや多少のリスクを覚悟で賭けに打って出た――下手をすれば彼女にとって忘れてしまいたい存在である友人の話を持ち出した時点で、逆に拒否反応を起こして塾を辞めて逃げる可能性だってあるわけですからね……しかし賭けに勝ち、そして彼女の信用を得た」
 「そういうことだ。やがて、友人が逮捕されたというニュースが飛び込んできた。俺も一安心した。ところが……高校生という年頃は難しいものだな、逆にリナは安堵するどころか、目に見えて精神的に不安定になっていった。もちろん、ここは真面目に全力で彼女の相談相手になってやった。するとリナは――驚くようなことを言ってきた」
 「それは……?」
 「セックスというものが忘れられない、とね」
 「……ほう」
 「俺はリナに言い聞かせてやった。不安のせいだから、まずは落ち着けとね」
 「……しかし、後藤氏はそこで我が物にした……違いますか?」
 「心療内科にでも連れて行ってやるべきだったかな?」源の言葉に後藤はニヤけて言った。「あとはもう簡単だ。それこそリナは俺とのセックスが忘れられなくなった」
 「いよいよ盛り上がってきましたね……私もお手洗いに失礼していいですか? 佳境に入る前に済ませておきたい」
 源はそう言って立ち上がって行った。
 後藤は自分で熱燗を猪口に注ぐと、得意顔でグイッと一気に飲み干した。
 後藤は、初めてリナを我が物にした時のことを思い起こしながら――それを肴に新たに注いだ酒を一人で飲み始めた。
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