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狂人、淫獣を作る
第3章 飼育
 「なんで似てるんだろうなー。ねえねえ、お姉ちゃんたち、同じ男の人が好きなんじゃないの?」
 マユとリナは、程度の差はあれ下腹部の奥にある芯の薄い場所を、針で突き刺されたような気持ちになった。そして恥ずかしいような、切ないような、そんな同じ表情を同時に見せた。
 「……ほんと、生意気なこと言っちゃってー」リナがなんとか笑顔を取り戻して言った。「そんなユメちゃんだって好きな男の子がいるんでしょ?」
 結芽は「えー……!」と言いながら、座ったまま横に倒れて、そばにあったクッションで顔を隠した。
 「やっぱりいるんだー。お姉ちゃんには分かるんだよ? ユメちゃんと同じ女の子だもん!」リナが言う。「ねえねえ、ユメちゃんはその男の子とどうしたい?」
 「えっとねー……」結芽はクッションで顔を隠したまま言う。「お嫁さんになりたい! 真っ白のままの結芽をお嫁さんにしてもらうの!」
 マユが一瞬切なげな顔を見せる。
 リナも一瞬ものうげな顔を見せた。
 リナは一旦うつむいたが、顔を上げるとまた笑顔に戻っていた。「ねえ、その男の子の名前教えてよ?」
 「えーっ! ヤダヤダヤダ!」結芽がクッションで顔を隠したままショートパンツの足をばたつかせる。「お姉ちゃんたち、誰にも言わない?」
 「言わない言わない!」リナが受け答えを続ける。マユはほほ笑みながらも黙っている。
 「んー……やっぱりナイショ!」
 「もー! こらー!」
 「でもね……ユメもう一人お嫁さんになりたい人がいるんだぁ」
 「うわ。二人も好きな男の子がいるのぉ?」
 「うん。パパのお嫁さんになりたい!」
 リナは何か言おうとしながらも、口を開けたまま止まってしまった。
 マユは結芽から顔をそらせた。
 「だってね、パパがユメをお嫁さんにしてあげるってずっと言ってくれるんだもん。でも、ママもいるしー……どうしたらいいと思う?」
 マユとリナは腹の中に鉛のような重いものがずしりと落ちてくるような感覚を味わいながら、何とかして笑顔を保っていた。
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