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第1章 体だけの関係

「何度言わせたら気が済むんだ！人にお金を貸すなって前にも言っただろうが！」

俺の大声に少しだけしゅんと小さくなりながら、目の前にいる女の子、佐藤志織はにへら、と笑った。

「だってバス代もないって言うんだもん」

「お前はバカか。大学に通ってるんだぞ？定期を持ってるに決まってるだろうが！」

「あ、そっかあ！」

のほほんと笑う志織に俺は痛む頭を抱えた。

彼女と初めて会ったのは約一ヶ月ほど前だ。
無理矢理連れて来られたコンパで、姉の代わりに来たと言っていた志織は周りの奴らに嫌というほど飲まされていた。

目的なんかみえみえで。
他の女の子たちも若干引いてたほどだ。

関わるな。
頭の中でそう警告音が何度も鳴った。

なのに……いつの間にか気づいたら俺は志織の手をとって逃げていたんだ。