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彼女は思い通りにいかない
第7章 約束の2月
「わ、私……」

さっき引っ込めたはずの涙がまた溜まり、今度は静かに流れた。

ごめんな。
迎えに来るの遅くて。
あと3ヶ月だっていうのに我慢できない奴で本当にごめん。

「悪かったな。混乱させたよな?けどこれだけは言っときたくて。俺は志織が好きで抱いてたよ。セフレだなんて一度も思ったことなんてない」

「は、遥斗さ…」

「だからもっと自信を持て。そんなに自分を卑下すんな」

名前を呼ばれてこんなに胸が苦しくなるのは初めてだった。
何度志織に名前を呼ばれた?
何回志織は俺の名前を呼んだんだろう。

だけどこんなに切なく呼ばれたのはきっと最初で、そして最後なんだと思った。

「じゃあな。さっきの男なら俺も安心して任せられるよ」

「遥斗…さん?」

「元気でな」

「遥斗さんっ!」

後ろですすり泣く声が聞こえた。

後ろを振り返ってやることができたらどんなに良かっただろう。
抱き締めてあげることができたら…キスしてあげることができたら……

でももうそれは俺の役目じゃないよ。

そう言い聞かせて、俺は志織の前から消えた。




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