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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章       

翌日の日曜日。

早朝に出勤してきた朝比奈はクリスから一部始終を聞き、安堵とも困惑とも取れる複雑な表情を一瞬だけ覗かせた。

「とにかく……、ご無事で何よりでした」

「うん……」

「ヴィーの事は俺が四六時中見張っているから、もう安心してくれたまえ」

部屋に落ちた沈痛な空気を一気に霧散させたのは、あれからヴィヴィの横に張り付いて離れないフィリップだった。

流石に就寝時は、ダリルに部屋から蹴り出されていたが。

「ふ……。そうですね、宜しくお願い致します、フィリップ様」

苦笑し いつもの柔和な執事に戻った朝比奈に、フィリップは胸を叩いて「どんと任せろ」と息巻いていた。

しかしそんな彼を横目に、双子は荷物を手に席を立つ。

「じゃ、朝練行くから」

「え!? ヴィー、今日くらいゆっくりしなよ」

美しい碧眼を丸くして驚くフィリップに、ヴィヴィは隠すことなく げっそりした表情を浮かべる。

「……リンクのほうが、落ち着くし」

先ほどのフィリップの宣言通り、本当に四六時中べったり見張られているので、若干の息苦しさを感じていたヴィヴィに、クリスも賛同を寄越す

「まあ、そうだろうね……」

「どいひ~~、双子して、どいひ~~」

つれない双子に、フィリップは冗談めかしてテーブルに突っ伏したが、その広い背をポンと遠慮がちに叩いたのは、一応彼女であるヴィヴィだった。

「冗談だよ。えっと……色々と、ありがとう、フィリップ。行ってきます」

「~~~っ!!」

珍しいヴィヴィからの労りの言葉に、テーブルから がばっと跳ね起きたフィリップ。

「行ってらっしゃいませっ マイスイートハニー♡ & 未来のお義兄様ぁ♡♡♡」

♡が飛びまくりの見送りの言葉を寄越してくる妹の彼氏に、いつも無表情のクリスが端正な顔から更に表情を削ぎ落とし、心底嫌そうに呟いたのは、

「……未来の、お義兄様……」

そんなワードなのだった。



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